多くの医療機関に共通する問題として、高齢者への看護の難しさがあります。高齢者は加齢によって体力が低下しているのに加えて、病気と運動不足から身体機能の低下も顕著です。わずかな刺激を受けても過敏に反応することがあるため、高齢者に対する看護は慎重に行う必要があります。
しかし、高齢者側が年寄り扱いされるのを嫌がるケースが多いのが実状です。看護の方針に不満を抱き、言いがかりに近いクレームを付けることも珍しくありません。ときには高齢者の親族が加担することもあるので、年寄り扱いしていると思われないように態度や言葉遣いには十分な注意が必要です。その一方で、高齢者に対する気遣いが余計な手間になってしまい、他の看護業務にしわ寄せが及んでしまう問題もあります。
高齢者への看護でありがちなのが、他の患者と同様に接しただけでアザや強い痛みが生じるトラブルです。これは、長く体力が低下した高齢者に多く見られる軽度の不具合であって、看護師が暴力を振るったわけではありません。しかし、加齢と病気、運動不足などの要因が積み重なって起きる不具合であると認識できず、看護師に虐待されたと騒ぐケースは少なくないのです。
ベテランの看護師なら過去の経験から高齢者への接触は細心の注意を払うものと理解していますが、経験が浅い新人の看護師は他の患者と同じように接触してしまうため、その結果としてトラブルに至ってしまいます。これは看護師自身が身をもって学ばなければ理解できないことであるものの、本人にとっては非常にショックが大きい出来事です。このことを理由に離職してしまうケースもあるため、近年では事前に高齢者への接し方を指導する医療機関が増えてきています。